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皆さんこんにちは。
第8回のStory of Buildersはアキム・ウィリアムズ選手(Akim Williams)です。
8月初頭に開催されたタンパプロで優勝しましたが、その結果には賛否が別れました。
何はともあれオリンピアへの出場権を獲得したアキムでしたが、今年でオリンピアへの出場は4回目となる実力者です。
以前紹介したネイサン・ディ・アーシャに似た骨格で、正面から見た時の背中の広がりが特徴的です。
そんな彼はいかにしてボディビルと出会い、今に至っているのか。
そのルーツを探り、彼の真価に迫りました。
目次
基本プロフィール
身長:約178cm(5.10ft)
体重:約120kg(大会時)
国籍:アメリカ合衆国
生年月日:1984年8月20日
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生まれ~ボディビルダーになるまで
アキム坊やは1984年8月20日にアメリカ合衆国ニューヨーク州で誕生します。
母親はグレナダ、父親はトリニダード・トバゴ共和国出身で、中南米にルーツを持っています。
幼い頃は至って真面目で、勉強も運動も両立していた優秀な学生でした。
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元々はバスケットボールクラブに所属していましたが、辞めてしまい、時間が大いに余ってしまいました。
そんな時、海軍に入隊する予定だった友人から誘いを受けます。
「一緒に鍛えてくれるトレーニングパートナーを探しているんだけど、アキムどう?」
トレーニングにはあまり興味がなかったため、乗り気ではなかったアキムでしたが、暇を持て余していたので承諾することにしました。
という事で、友人と共にジムに入会することになります。
が、しぶしぶ入会したため、筋トレにハマるまでに時間がかかりました。
最初は適当にセットを組んでいましたが、少しずつジムに行く頻度を増やし、知識を増やしていきました。
セオリー通りに筋トレを進めていくと、ある日体が変化し始めていることに気が付きます。
そこから筋トレの魅力に取りつかれ、筋トレをする事が当たり前の生活が始まりました。
筋トレをして、体が大きくなればなるほど、人からの視線が自分に集まり、それが快感になっていきました。
バスケットボールクラブに所属していた時は体重が66kgしかなかったアキムでしたが、気付けば体重は10kg以上増えていました。
高校を卒業した後は大学に入学して、情報科学を専攻していました。
大学に入学してからももちろん筋トレは続けており、いつものようにジムの帰りにバスに乗って家路に着こうとしていました。
その時こそが彼の人生のターニングポイントでした。
一体何が起きたのか。
彼がバスに乗り込もうとしたところ、乗車口のすぐ近くに一人の女性が座っていました。
彼女はアキムの体を見るなり、大変驚いた顔をして、
「すごい上腕三頭筋ね!」
と褒めてくれました。
「あ、ありがとうございます。」
と少し困惑気味のアキムでしたが、座席に座ると、その女性がアキムに歩み寄ってきたのです。
すると、彼女はアキムに名刺を渡してきて、話し始めました。
「あなた、本当にすごい体をしてるわね!才能があると思うわ!!
実は私の旦那はね、あのアーノルド・シュワルツェネッガーと一緒にトレーニングしたことがあるのよ~。
スタテン島に住んでいるんだけど、今度良かったら旦那に会ってみない?」
急に話しかけてきて、自慢話か、、、とアキムは軽く聞き流しました。
結局その日は名刺をもらっただけでしたが、家に着いてからアキムは考え込みました。
「本当の話だったらすごくないか、、、?」
少し期待を寄せては、「いやいやそんな訳ないだろ笑」と正気に戻って、という思考をかれこれ数日間繰り返しました。
「まあ、失うものもないし、一回信じてみるか」
最終的にアキムは友人に頼み込んで、一緒にスタテン島に行くことにしました。
友人を連れてきたのは、万が一襲われた時や、犯罪に巻き込まれた時に助けてもらうためでした。
そして、友人と二人でスタテン島に向かい、名刺を渡してきた女性とジムで再会しました。
女性は改めて、自己紹介をしてくれましたが、まだこの時点では半信半疑でした。
女性は
「あと少ししたら旦那が来るから、ちょっとだけ待ってて!」
と言い、彼らに待つようにお願いしました。
しかし、待てども待てども彼女の旦那は来ず、結局30分待たされる羽目になりました。
「俺たちやっぱり騙されたんじゃないか?」
アキムと友人の2人は警戒を強め始めました。
緊張感が高まる中、トレーニングウェアを着た男性二人が登場しました。
そのうちの一人はかなり激昂しており、現場にはただならぬ緊張感が流れていました。
男性「なんでこんな奴らにトレーニングの邪魔をされないといけないんだ!!俺はホームレスに構っている時間なんかないんだよ!!」
激昂した彼はアキム達の目の前で妻に対して怒鳴り散らしました。
当時、アキムはボディビルの知識が全くなかったため、その人物が誰か分かりませんでした。
しかし、のちに分かったことですが、実はその人物こそアーノルドのトレーニングパートナーの一人であったリーオン・ブラウン(Leon Brown)でした。
Leon Brown was one of my favorite training partners at Gold’s Gym in the golden era of bodybuilding. He was such a sweet guy, and unbelievably strong. I will miss him. My thoughts are with his family. pic.twitter.com/JL3n6VVb9t
— Arnold (@Schwarzenegger) September 25, 2021
つまり、女性が言っていたことは本当だったのです。
しかし、それが本当かどうかも知らないアキム達は依然怯えていました。
すると、少し冷静になったリーオンがアキムに近寄ってきて、ただ一単語、こう告げました。
「脱げ」
突然のことに、アキムは動揺しました。
しかし、リーオンは続けて
「俺たちはゲイではない」
とも伝えてきました。
さっきまで激怒していた姿を見ていたため、何をされるか分からないと思い、アキムは言われた通りにジムの真ん中でパンツ一丁になりました。
それに気づいた周りのトレーニーたちが異常者を見るような視線でアキムを見てきました。
恥ずかしさを隠せないアキムでしたが、リーオンは360度彼の体を舐めるように見た後にこう言いました。
「よし、来週のボディビル大会に出るぞ」
アキムの頭の中に「?」が大量に浮かびました。
ポージングも分からないし、そもそも大会がどう進行されるのかも知らない。
しかし、リーオンに強く説得され、言われるがまま大会に出場することにしました。
「俺の知り合いの大会だから、今からエントリーしても間に合う」
という事で、1週間という限られた時間の中でアキムは最善を尽くしました。
大会当日。
不安でいっぱいのまま、ペンシルベニア州の会場へ車で向かいました。
アキムが初めてエントリーした大会とは、NPC Bill Grant Classicでした。
つまり、リーオンの知り合いは、彼と同時代に選手として活躍していたビル・グラント(Bill Grant)のことだったのです。
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大会のバックステージでは鍛え上げらた体の選手が集結しており、アキムは見慣れない光景に恐れおののきます。
「何だこの人たちは、、、」
ビビっているアキムにやたら視線が集まり、
(やばい、初心者ってバレたかもしれない、、、)
と、彼はどんどんネガティブなマインドに陥ってしまいます。
そんな心境の中、大会が始まり、アキムはステージ上でできる限りのことをやり遂げました。
結果的に、見事にアキムはBill Grant Classicのノービス(初級者)のヘビーウェイト部門で優勝することができました。
大会後に選手の一人がアキムに話しかけてくれました。
「みんなが君を見てたのは、君の体を見て負けを確信していたからだよ笑」
圧倒的な体でデビューしたアキムのボディビル人生はこの日から始まりました。
IFBBプロになるまで
一番いい形でデビュー戦を飾れたアキムは同年に開催されたNPC主催のEastan USA Championshipsに出場します。
この大会でもライトヘビー級で優勝し、着々と実力をつけていきます。
そして翌年の2011年、次はNPC Junior Naitonalsに出場しようと決めます。
この大会はアメリカ中からダイヤの原石が集まる大会で、過去2大会よりもかなり格上の大会でした。
出場前にアキムは自分の中で目標を立てました。
「もしこの大会でトップ5に入れたらIFBBプロを目指す」
いきなり優勝を目指すことは、現在の実力的に非現実であると判断し、アキムにとってはギリギリ目指せる範囲の目標でした。
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結果は4位入賞で、何とか目標を達成することができました。
アキムは喜びに満たされるのと同時に、そこから本格的にIFBBプロを目指し始めました。
しかし、実はこの時アキムは正社員として働いており、さらに行政学の修士課程の途中でもありました。
それに加えてIFBBプロを目指すのですから、かなりハードルが高いことが想像できると思います。
しかし、自分の実力を信じて、目標を達成すべく、過酷な生活が始まりました。
アキムは2年前に出場したEastan USA Championshipsに出場することにしました。
2年前はライトヘビー級での出場でしたが、今回は階級を2つ上げ、スーパーヘビー級で出場しました。
要するに2年間で純粋な筋肉量を20kg近く増やしたという事です。
説明するまでもなく、すさまじい努力と素晴らしい遺伝子あってのことです。
大会では階級優勝、さらにはオーバーオール優勝まで果たし、自身のポテンシャルを証明しました。
そして、その勢いのまま翌年の2013年NPC North American Championshipsに出場しました。
この大会はボディビル部門で2枚のIFBBプロカードが発行されることになっていました。
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アキムは3年間積み重ねてきた経験と最高のステージングを披露し、見事に階級優勝、オーバーオール優勝を果たし、文句なしでプロカードを獲得することができました。
因みに2枚のうち、1枚がアキムで、もう一人が前回紹介したアレックス・カンブロネロです。
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こうして次はIFBBプロとしての人生が始まることになります。
IFBBプロとしての活躍
3年間かけて、やっとの思いでプロになったアキムでしたが、アマチュア時代からプロ顔負けの筋肉量があったため、活躍し始めるまでそう時間はかかりませんでした。
最初に出場したのが、2014年のニューヨークプロでした。
結果は11位で終わりましたが、プロの実力を肌で感じた貴重な経験となりました。
翌年の2015年にはヨーロッパ・ダラスプロで3位、シカゴプロで3位など、早くも頭角を現し始めます。
そして翌年の2016年、ついにアキムはタンパプロで優勝し、オリンピアへの出場権を手にしました。
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2016年のオリンピアは15位という結果になりましたが、基本的にその後は少しずつ順位を伸ばしています。
以下が彼の主なキャリアです。
2014 シカゴプロ 5位
2015 ヨーロッパ・ダラスプロ 3位
2015 タンパプロ 8位
2015 シカゴプロ 3位
2016 アーノルド・クラシック・アジア 9位
2016 シカゴプロ 6位
2016 タンパプロ 1位
2016 ミスターオリンピア 15位
2017 カリフォルニアプロ 5位
2017 ニューヨークプロ 5位
2018 マッスル・メイヘムプロ 2位
2018 ニューヨークプロ 10位
2018 トロントプロ 2位
2019 アーノルド・クラシック・オハイオ 9位
2019 アーノルド・クラシック・サウスアメリカ 3位
2019 インディプロ 2位
2019 ニューヨークプロ 2位
2019 ミスターオリンピア 9位
2020 アーノルド・クラシック 7位
2020 シカゴプロ 1位
2020 ミスターオリンピア 6位
2021 アーノルド・クラシック 5位
2021 ミスターオリンピア 9位
2022 タンパプロ 1位
※これはあくまでも彼のキャリアの一部であり、出場した大会すべてを網羅しているわけではありません。
2019年に関しては1年間を通して、9大会に出場しています。
それだけ彼はオリンピアへの意志が強いということです。
大会に出てはジャッジからフィードバックをもらい、改善していく。
プロになった今も上昇志向の姿勢は変わらず、他の選手たちからもリスペクトされています。
憧れの選手
彼には憧れの選手が明確に一人います。
それは”The Blade”の愛称で知られているデキスター・ジャクソンです。
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以前紹介したウィリアム・ボーナックもデキスターのことを尊敬しており、デキスターが後輩のビルダー達に与えた影響力の大きさを改めて感じます。
デキスターは1999年から2020年までの間に21大会連続でミスターオリンピアに出場した、正真正銘の生きる伝説です。
彼の凄まじさはただオリンピアに出続けただけでなく、トップ5に15回も入っているという事実です。
オリンピアに出場するだけでも難関なのにもかかわらず、さらにそのステージで結果を残し続けた功績は恐らく塗り替えられることはないでしょう。
いつか彼についての記事も書きたいです。
話は戻りますが、アキムもデキスターが結果を残し続けた事実、長いキャリアを全力で全うした姿勢を心の底から尊敬しています。
アキムが初めてデキスターに出会ったのは、IFBBプロとして初勝利を挙げた2016年のシカゴプロのことでした。
プレジャッジが終了し、決勝審査で順位が確定する流れでしたが、プレジャッジ後すぐにデキスターがアキムに歩み寄り、
「優勝おめでとう」
と話しかけてくれたそうです。
デキスターの言う通り、大会はアキムが優勝という結果で終わりました。
その後も彼らは大会を通して再会し、今ではフランクに話すほどの仲になりました。
おわりに
デキスターを尊敬してやまないアキムですが、彼は独自のポリシーがあります。
それは“UNIQUE”という考え方です。
自分は他人にはなれないし、他人も自分にはなれない。
当たり前のことのようですが、誰かを尊敬するあまり、その人と同じようになろうと頑張る人が多いのも事実です。
しかし、生まれ育った環境、その人が持つ遺伝子、骨格、価値観などが完全に一致することはあり得ません。
それを理解する必要があります。
生きていく上で、自分自身を受け入れ、自分のベストを更新していくことが何よりも重要なことであると、彼はインタビューの中で教えてくれました。
誰かになろうとすると、その人と比較して、ネガティブな感情になることもあります。
自分は自分。
他人は他人。
彼のように現実的で、具体的な目標を定め、常にベストを更新し続けられる人間でありたいですね。
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引用元:
Williams, Akeimアキムのインスタグラム↓